降車駅

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 よし、線路の向こう側に行ってみよう。  そう決めて、あたしは線路をそのまま横断した。 踏切のあったところまで戻るのは面倒だからね。  線路の向こう側はやっぱり田んぼだったけれど、少し行ったところからは民家の群れだった。 古い日本家屋みたいな家もあるし、今風の洋風建築の家もある。 プレハブ小屋みたいな建物もあって、建築物の群れの中に唐突に畑が現れたりする。  お店なんかもたまに見かける。 酒屋、八百屋、青地に赤で「かき氷」と書いたのぼり旗を軒先にひらひらさせている駄菓子屋、地域感のすさまじいスーパー、今や八百万の神並みに偏在するコンビニエンスなファ◯マ。  民家の中にぽつんぽつんと現れるそれらの前では、ご近所さん同士らしきおばさまたちが立ち話をしている。  そういうの、あたしが住んでいるあたりでは全くない。 同じマンションの住人でも、せいぜいすれ違ったときに挨拶するくらい。 あたし、隣の部屋に住んでいる人の顔も知らない。
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