3632人が本棚に入れています
本棚に追加
/733ページ
「でも、何?」
「スーツ……汚してしまいました。涙でびちょびちょ……」
「ああ、それもいいって。替えぐらいあるから。そんなことより……」
明るい声が、普段以上に心地よく感じる。
「こっちから触らないって条件、無視しちゃった」
「え? あ……」
「身体が勝手に動いてさ。許して?」
見上げると、苦笑いを見せていた。
そういえば、そんな条件があったっけ。でもこの状況下ではどうでもよくなっていた。
「もう、いいです……不可抗力だと思うので……」
私もしがみついたから同じ、と心の中で付け足して。
最初のコメントを投稿しよう!