10.明日、居なくなると思ったら

5/47
前へ
/733ページ
次へ
 しかし私はそうじゃなかった。  キラキラ輝くイルミネーションや人々の笑顔とは逆で、暗い表情で歩く。  それが日毎に増えて、纏う空気もどんよりしている。 「……あ」  スマホに磯崎さんからのメッセージ着信の音が聞こえてきた。  内容を確認すると、いつもの仕事終わった報告。向こうも同じく、年末で多忙。  つい最近まではこれだけでも嬉しかったのに、今は唇を噛み締めて見ている。  既読を無視すると心配されてしまうので、当たり障りのない言葉を頑張って返す。  このやり取りが終わるとすぐスマホをしまい、顔を覆う。  泣きそうになるので、それを周りに見られないようにする為だ。
/733ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3637人が本棚に入れています
本棚に追加