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「悠莉……」
人目につくところで、と思っていても。
ダムが決壊したかのように涙が溢れて止まらない。服や手に滴り落ちてくる。
嗚咽は、今までで最も激しい。
泣きじゃくる私に、ゆっくりと背中をさすりながら、
「……場所、移動しようか。泣いても目立たないところ、行こう。立てる?」
そっと寄り添うように、私を上手いこと立たせ、手を握りながら歩きだした。
移動した先は、会社の最寄り駅の程近いところにある、半個室の居酒屋。席に着けば周りはそんなに気にならない。
「ここなら、目立たないでしょ」
私のことを優先して考えてくれた、悠莉の絶妙なチョイス。確かにここなら泣いても多少は平気。
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