第1章

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あの時を思い返すと、儂の心に後悔の念が湧き上がる。 遠い昔、この世界は儂の物だった。 ゴブリン族、ケンタウロス族、ミノタウロス族、コカトリス族などの儂に忠誠を誓う部族の者達を使い、人間族や妖精族など多数の部族を、奴隷や家畜として扱う。 しかしある時儂に不満を持つ配下の部族が、奴隷や家畜として扱っていた人間族などに、知恵の実を食わせてしまった。 その為、多数の部族が知恵を付け、儂に反抗するようになる。 最初の内は一進一退の攻防が続いたが、数で勝る人間族により、段々と儂の軍勢は敗退する事が多くなった。 そしてあの最後の日、儂の本拠地である魔城の前に広がる大平原で、人間族を中心に結成された同盟軍と、儂の配下の部族の生き残り達との間で決戦が行われていた時。 勇者が率いる1隊が別働隊として魔城に襲いかかり、儂を鱠に叩きにした。 幾ら切り刻んでも、不死者の儂の息の根を完全に止める事が出来ない事に気が付いた勇者達は、足下に転がっていたワインの空きビンに儂を封じ込め、ビンから逃げられないように幾重にも術を施し、魔城の裏にある魔湖に放り込みやがった。 ビンは魔湖から魔川に流れ込み、流れ流れて魔海にたどり着く。 儂が封じ込められたビンは、数百数千、否、数万数十万年の間、魔海を漂い続ける。 最初の内はこのビンからの脱出を考え、儂の知る限りの魔術を試みたが、無駄であった。
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