座敷童子猫の心の痛み

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「おい、阿呆。何をボケボケしている」 「うるさい、ボケボケなどしていない」  ――まったく口を開けば嫌味な物言いだ。時歪はもう蔵に戻ってもらうか。 「おい、今、変なこと考えていなかったか」 「いや、別に」  素知らぬ顔をしたが、時歪は意外と勘が鋭いところあるから気づかれたかもしれない。  時歪は懐中時計だ。けど手足があってしゃべりもする。所謂、付喪神だ。こいつは時間を巻き戻せる毒舌付喪神だ。こいつのことはどうでもいい。今は時歪よりアキが気にかかる。なんだか、溜め息も漏らしている。何か思い悩んでいることでもあるのだろうか。  相談してくれればいいのに。いや、そっとしておいたほうがいいのだろうか。  ――アキから相談してくることはないのかな。ならば、俺から聞いたほうがいいよな。  アキが沈んでいると、なぜだかあたりも静まり返っているような錯覚に陥ってしまう。いや、本当に静かになっているのかもしれない。木々や虫や動物たちも心配してアキのことをじっとして見守っているのかもしれない。 ***
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