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*華ハル/本編
【中谷さんの観察記】
2年に進級したばかりの春、クラスに新たに加わった女の子──須賀真知留さん。
彼女を一言で表すなら、控え目、という言葉が当て嵌まるんじゃないかと思う。
小さく華奢な見た目を裏切らない、鈴のような細い声。
同級生に対するにはあまりに謙虚な言葉使い。
顔を隠すように前髪に触りながら話す仕草。
先生が「席はお前の隣にするから頼んだぞ」と内々に私に打診してきたのもわかる気がした。
頼りにされたからにはそれに応えたい。その子がクラスに早く馴染めるように努めよう──
半ば、クラスの委員長としての責務のように思っていたのだけれど……
それは彼女に接するようになって間もなく、変わることになる。
話しかければ、覚束ないながらも返ってくる言葉と必ずと言ってもいいくらい付いてくる嬉しそうな表情。
名前が書かれた席順表とクラスメイトの顔とを交互ににらめっこして、必死に覚えようと努力する姿。
いじらしいというか、ほっとけないというか……思わずぎゅっと抱き締めたくなるというか。
それらに続く気持ちはもうただ、“この子と仲良くなりたい”だった。
友達と言われて浮かぶ中に、私がいてほしいと思った。
その思いは手始めに、脱・敬語という形で芽が出た。
彼女にしてみたら思い切りのいることだったのだろう、どもりながら真っ赤な顔でタメ語に直した様子は、こっちが照れちゃうくらい可愛くて。そして何より嬉しくて。
因みに、クラスの中でその第1号になれた優越感みたいなものもちょっぴり感じてたのは、ここだけの話。
ともかくも、あの日を皮切りに大分打ち解けたのは確かだと思う。
タメ語でのお喋りもすっかり馴染んだし、彼女の方から私に寄ってきてくれるようにもなった。
……ただ、“控え目”なのは相変わらず。
それが彼女らしさなのだと言えばそうなんだけど、私が気になるのはそれが過ぎるということだ。
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