八月

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うんうん、と頷く奈緒ちゃんに対し、須賀さんは、んん?と首を捻る。 「あの…それってどういう……?そういえば、さっきも『今年んの』って……」 「あ、そっか。美也っちうっかりしてて、説明がまだなんだっけ」 「……事実だけど、『うっかり』は余計だよ。 でもまぁ、先生からも仰せつかったし、その巻き返しをさせてもらおうかな」 私は気を取り直すようにコホンと咳払いをして、須賀さんに向き直った。 「ほら、球技大会はクラス対抗戦でしょ?このハチマキはその印みたいなもので、実はクラス毎に色が違うの」 「え、じゃあ全部で18色も……?」 「そうなの。でね?それだけあれば正直微妙な色もどうしても出ちゃうじゃない?だから、どれに当たっても恨みっこなしってことで、各クラスの担任の先生達によるくじ引きで決まるから、年によっても色が違うんだよ」 このハチマキの意義としては、ぱっと見でクラスがわかるように、ということの他に、クラス内の団結力を高めるためにっていう学校側の狙いがあるのだとか。 まぁ、うちのクラスは比較的まとまりもあるし、例えハチマキが無くても団結力という点では心配はいらないだろうけど。 羽田くんを筆頭に『素直』な面々が集まったクラスでもあるから、気分を盛り上げるにはうってつけのアイテムとも言える。 「成程……」 「あ、でもね?ああして盛り上がってるのって、それだけが理由じゃないんだよ。……ね?」 「そうそう。寧ろこれからがメインなんだな~」 あれだけ練習に行きたがってたにも拘わらず、ハチマキを手に未だ教室に留まるクラスメイトを見渡しながら、奈緒ちゃんと共に勿体ぶるように言えば、須賀さんは大分興味をそそられたらしい。 知りたい、教えて、と顔に書いてあるようなわくわくした様子に2人で顔を見合わせこっそり笑い合ってから、私はハチマキの裏側を指差した。 「これは代々伝統っていうか、慣わしみたいなものなんだけど……ここにね、大会の意気込みとかエールやなんかを書き合うの」 「友達とだったり、チームメイトとだったりね」
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