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ちょっと待って。
今……彼氏って言った?
しかも話の流れからいって、まるで……
いや、とりあえず…とりあえずだ。確認を取ってみよう。
「あ…あのさ、奈緒ちゃん。彼氏って……誰に?」
「またまた~、とぼけちゃって。須賀っちに決まってるじゃん♪」
「──っ!!」
さも当然のように言ってのけた奈緒ちゃんに、思わず「まさか!?」と叫びそうになった。
可愛らしくて守ってあげたくなるような子だ、彼氏がいたって全くおかしくない。
おかしくはない、けど……
須賀さんからそんな話を聞いたこともなければ、素振りだってない。
今の今まで、彼女に一番近い男子は風祭くんだと思ってたくらいなんだもの、とぼけるもなにも……。
当の須賀さんにいたっては、“鳩が豆鉄砲くらったような顔”を見事に体現したまま固まっている。
つまりはそれが答えなんだろう。
「……あれ?二人とも何、その反応」
ただ、奈緒ちゃんにとっては、私達の反応が思っていたものと違ったことに、納得がいっていないというか半信半疑な様子。
白黒付けるため、再度須賀さんに問い直した。
「須賀っち、彼氏いるんでしょ?」
「……い…」
「い?」
「いいいいいません……っ!いるわけないですっっ!!」
出会ってから初めてじゃないだろうか。
こんな大声を聞いたのは。
教室に残っていたクラスメイトが何事かと注目するのも目に入っていないようで、尚も須賀さんはあり得ないとばかりにふわ髪を乱しながら、ブンブンと首を左右にこれでもかと往復中。
へたすると、もげてしまいそう。
「す、須賀さん、落ち着いて?」
「ほ、ほんとです…っ、私なんかにそんな人……」
「わかった、わかったよ、須賀っち!だから落ち着こ?」
奈緒ちゃんと一緒に須賀さんを宥めつつ、集まっていた視線に対し、ゆるく首を振ることでなんでもないよと暗に伝える。
そうすれば、視線の数々は次第に散らばっていき、同じくして須賀さんも落ち着きを取り戻して、取り乱したことを恥じ入るように縮こまった。
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