十月

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*華ハル/本編 【ハチマキのジンクス-真知留side-(1/10)】 「お天気おねーさんのうそつきぃぃいっっ」 雨をかき分けるようにこだました、恨みがましさが滲む叫び。 その発信元は、私の右隣。頭に被せたタオルの両端を持ち、暗い空を睨むようにして仁王立ちする栗崎さんだ。 そのまた右隣で、トントンと丁寧に服をハンドタオルで拭いていた中谷さんがそんな彼女をまぁまぁと宥める。 「言っても梅雨の最中だし、あくまでも予報だしね」 そう言いながらも、軽快な雨音と共にその雫が止めどなく滴り落ちている軒先を困りげに見上げる中谷さんに、私も眉を下げる。 「……でも、残念……折角皆で集まったのに……」 私達がいる場所は、市民公園の一角──青々とした芝生を木々が緩やかに囲う広場の脇にある東屋。 公園と言うには広大な敷地のここは、自然学習館やアスレチック、野外ステージなんかもあって、イベントなどもよく行われている市民憩いの場なんだそう。 球技大会も残り1週間余りとなった今日、「集まれる子だけでも集まって練習しない?」という栗崎さんの声掛けで、学校は場所の確保が難しいからとここに来たのだけれど…… 練習し始めて30分も経たないうちに降り出した突然の雨により、文字通り水を差されてしまった。 放課後に学校じゃない場所でクラスメイトと過ごせる機会なんてそうそうなかった私にとっては、残念さもひとしおで。 このまま解散になっちゃうのかな……。 雨め……もう少し空気を読んでくれたって… 「マジで雨の野郎、空気読めっての!つか、突然とか本気勘弁なんだけどっ」 奇しくも私の思いに同調したように声を上げたのは、左隣で艶のある赤みが強い茶色の長い髪を丹念に整える高峯さん。 セットが台無しじゃんっ、と鞄から取り出した手鏡とにらめっこする彼女は、栗崎さんの声掛けにいち早く反応したチームメイトの一人だ。 そして。 「ミネちゃん、だいじょぶよ。雨降る前から割と台無しだったから~」 あはは~、と笑いながら和やかに、けれど穏やかならぬツッコミをする、色白でぷっくりとしたほっぺと円らな瞳の彼女、関さんもまた、その一人である。
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