十月

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(2/10) メンバーは他に4人いるんだけど、掛け持ちしている他の種目の練習や外せない用事があって来られず、集まったのはこの5人。 因みに球技大会前10日は、差し迫った大会やイベントがない限り、ほとんどの部活が放課後の活動を免除されるらしい。 テスト前のような対応に、行事に重きを置いた学校なんだなぁと思いきや、中谷さん曰く、その方が部活へのモチベーションも上がるから、とのこと。 事実、放課後がない代わりに朝練がきつくなるけど、楽しみがあるから頑張れるんだと栗崎さん。吹奏楽部に所属する関さんやチア部の高峯さんも、逆に自主練に身が入るのだと言っていた。 勿論というか、この期に遊び倒そうとする人達もいるみたいだけど、栗崎さん達のような生徒が大半なんだそう。 これが学校側の狙いなのだとしたら、ここの先生方はなかなか遣り手というか侮れない。 まぁ、それはともかくも。 全員ではないにしろ、部活動免除のお陰でこうして集まれたというのに、この雨。 急いで避難したからあまり濡れずに済んだのは幸いだけど、止みそうにもなくて。 けれど、このままバイバイは寂しすぎるし、皆の足を引っ張りかねない私には、練習する時間が多いに越したことはない。 何かここでもできることは…… あっ。 「あ、あの…高峯さん」 「ん?」 「それ、借りてもいいですか……?」 私が指差したのは、高峯さんのすぐ後ろにある卓ベンチに立て掛けられたバットだ。 今はチア部で活躍する高峯さんだけれど、中学の時の所属はソフトボール部。そんな経緯もあってチームではキャプテンを務めているし、学校の備品は持ち出し禁止だからと、ボールやグローブなどを人数分調達してくれたのも彼女なのだ。 「お。何、もしかして素振りすんの?」 「は、はい」 「あ、そっか。それならここでもできるね」 「確かに!その手があったかー」 高峯さんのご明察な問いに頷いてみせると、なるほどとばかりに声を上げた中谷さんと栗崎さん。 「わぁお。須賀さんてば、気合い入ってる~ぅ」 「こら、他人事か。マルもこれくらいやる気見せろよ」 対して、別の視点でもってリアクションをみせた関さんを呆れたように笑って軽く小突いた高峯さんは、ほら、と快くバットを差し出してくれた。
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