十月

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(4/10) そんな思い出も、風祭くんはきっと覚えていないだろうけど。分かち合えないことに寂しいと思ったりもするけれど。 でも、シュウくんの面影を見つけると、嬉しかったりほっとするのも本当。 “あの頃”と“今”は切れずに繋がっているんだと感じられるから。 シュウくんと仲良くなれたんだから、風祭くんとだって、たとえどんなに時間が掛かったとしても仲良くなれるって、そう思えるから。 ……そうだ。今日のこと、ほんとに報告してみようかな? 上達したって言われたよ、って。 風祭くんのお陰だよ、ありがとう、って。 そしたらどんな顔するかな? 喜んでくれるかな? またあの笑顔で… 「ね、もしかしてさ、誰かに教えてもらったとか?」 「ふぇ…っ!?」 まさしくその『誰か』が浮かんでいただけに、わかりやすく声が裏返ってしまった私を見て、栗崎さんはにやりと笑む。 「お。その反応は図星だなぁ? まぁ、タカミーはないとしてー」 「うっさい。教えんのだって向き不向きがあんだろ。つか、栗崎だってコッチ寄りのくせに」 「おおっと。それは言わないお約束ですぜ、ダンナ」 「ったく。調子いいよな。 ──んで?誰なワケ?」 テンポよく会話をしていた2人の視線が再びこちらに向く。 ただし、それに答えたのは。 「私知ってる~。風祭くんだよね~」 にこにこと笑う関さんだったから、私は思わず2度目の奇声を上げてしまった。 だって、なんで関さんが……!? 確かに中谷さんには話したけど、目配せした彼女からは誰かに話した様子は感じない。 だとしたら…… 「え、えと、見てました?私、集中してて気付かなくて……」 「んーん。見てたのは私じゃないよ~。 でも『手取り足取り腰取りだった』って聞いちゃったぁ」 「っ!!?」
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