十月

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(9/10) だってきっと、一人じゃ無理だった。 仲良くなるための努力を自分なりにはしてるつもりでも、やっぱり背中合わせにある、不安。 これは間違ってないかな、空回ってないかな、そんな気持ちが靄みたいに、『友達』への行く手を霞ませていた。 皆がいなかったら、ずっとおんなじ場所をぐるぐると回っているだけだっただろう。 友達作りも下手で、クラスの輪にも入れず、悩んで凹んでた過去の私からは考えられない。 こんな風に、こっちだよと手を差し伸べてくれる人達が私の傍にいる、なんて……。 「……私、転校してきたのがこのクラスで、よかったです。皆に出会えて……ほんとうに、嬉しいです……っ」 鼻の奥がツンとして、喉がぎゅううっと締め付けられるみたいにじんじんと痛む中、なんとか出した声は、やっぱり涙声で。 辛うじて涙は目の際で留まっていたけれど…… 「うん、一緒だね」 くしゃりと顔を綻ばせた中谷さんの一言で、難無く決壊してしまった。 「あー、美也っち泣かせたー!」 「えぇ、私だけ?連帯責任じゃない?」 「ん~、ならぁ、ちょっと湿ったハンカチでよければ提供するよ~?それかぁ、ミネちゃんのほんのり柔らかい胸か~」 「おいこら、ほんのりは余計だっつのっ」 泣き止ませようって意図があったのかなかったのか。 私を囲んで交わされる冗談混じりのやりとりは楽しげで、ついつられて笑ってしまう、……と。 「……笑ったな……?」 関さんに向けられていたジトーとした高峯さんの目が、私へとターゲットを変えた。 「え、あ……、す、すみませ…っ、でも、笑ったのはそういう意味じゃ…」 「でも笑ったよな?」 「や……その…」 「落とし前、つけてくれるよな?」 弁解するも、畳み掛けるように凄んでくる高峯さんは、栗崎さんより背があるだけに迫力も満点だ。 つい頷いて……正しくは頷かされてしまった私は、どんな『落とし前』を申し付けられるのか身構えたけれど。 「んじゃ、須賀。アタシらへの敬語、今から禁止。さん付けもな」 待っていたのは思いもよらないそれと、悪戯っぽい笑みだった。
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