四月

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『泣くなって、マチ。 どんなに離れてても、俺たちずっと友達だろ!』 お別れが悲しくて遂には泣き出してしまった私に、そう言ってくれた男の子。 シュウくん。 『どこにいても俺が絶対助けに行ってやるからな』 頼もしい言葉と、優しい笑顔を真っ直ぐ向けてくれて。 『だから約束。 それと……これは友情の証だ』 そうして柔らかくも固く交わした指切り。 続けて差し出されたストラップは、私がシュウくんにあげようと用意していたものとチャームや色は違えどお揃いで。 ただの偶然とは思えないそれに、『すげーな、俺たち!』と目を輝かせて嬉しそうに笑ったシュウくんのお陰で、やっと私は笑えたんだ。 離れてからも、その思い出はずっと色褪せず心の中にいて、私を支えてくれた。 新しい学校になかなか馴染めなかった時も、転校生にはよくあるだろう嫌がらせにあった時も……あの約束が、証が、シュウくんの存在があったから、心が潰れずにいられた。 だから、またこの地に戻ってくることになって、まず浮かんだのはシュウくんのことだった。 決して小さくはない街だということも、あの思い出は鮮明でも、それ以外は朧気で宛に出来ないことも、引っ越して早々に突きつけられてしまったけれど。 私がそうであったように、既にこの街にはいない可能性だって考えたけれど。 でも、それでも。 きっと。もしかしたら……。 肩に掛けた鞄に手を滑らせて、シュウくんから貰ったストラップをきゅっと軽く握る。 ──ガラッ。 「須賀、おまたせ。入って」 「……はい」 教室の中から聞こえるざわめきが緊張と不安を煽るけど。 ほんのり宿るあたたかな期待に後押しされるように、私は足を踏み出した。 image=499618806.jpg
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