五月

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*華ハル*再会* 「須賀真知留、です。…どうぞよろしくお願いします」 自分の名前が大きく書かれた黒板のすぐ前。 しんとした空気の中で発した言葉は定型の挨拶なのに、声が少し震えてしまって。 それを誤魔化すみたいに、私はぺこりと頭を下げた。 クラスメイトからの拍手を受けながら顔を上げてからも、目線だけはやや下に向けたまま。 だって、こうしてたって教室の視線という視線が自分に集中してるってわかるのに、それを目で確認してしまったらもっと緊張するのは明らかで。 教室に入る前に覚悟はしてたけど、この特有の空気感はやっぱり居心地のいいものではない。 ……うぅ…早く解放されたい……。 そんな思いが伝わったのか、私の横に立っていた先生が、パンパンと2回大きく手を打って視線を自分に集めた。 「というわけで、皆仲良くな。慣れないことも多いだろうから、手助けするように」 そうまとめた先生は、生徒を見渡していた目を私に寄越し、「でだ、須賀の席はあそこな」と指をピッと定める。 ピントをそこに合わせれば……教室のほとんどど真ん中。 「…………」 一番後ろの端でいいんですけど……とはまさか言えるはずもない。 きっとクラスに早く馴染めるようにとの配慮だろうし。 はい、と小さく返事をして、用意された席へと足を向ける。 向かいながらも耳に入ってくる密かなざわめきと、再び集まる視線たち。 その中。一際強いそれを感じた気がして、まるで引っ張られるように私は顔を上げた。 ────え……。
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