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情けない話、まともに話せたのは転校初日、校内を案内してもらったあの時だけ。
それだって、初めはすごくぎこちなかった。
必要以上に緊張していたし、『今日は』だなんて気を悪くさせるような言い方をしてしまって。
彼がシュウくんかどうかもわからないのに、『須賀』って呼ばれることに、『風祭くん』と呼ぶことに言い様のない違和感があったのもその一因だと思う。
だけど。
歩くペースを合わせてくれたり。私の希望を聞きながらも、効率よく廻れるよう考えてくれたり。
ちょっとした呟きもおざなりにせず、拾い上げて会話を広げてくれたり。
そんな気遣いや楽しげな顔に触れるたび嬉しくて、そのひとつひとつにどこかシュウくんを感じたりして……緊張も自然に解れていって気付けば笑っていた。
……それでも、私は未だ“風祭くんはシュウくんなのか?”の問いに答えを出せずにいる。
ずっとシュウくんと呼んでいたからかフルネームも思い出せない、このあやふやな記憶のせいもあるけれど……風祭くんが私を知っている素振りがない、というのが大きい。
気付いてないだけ?
それとも、人違い……なのかな……。
でも、他人のそら似だというには、私の中で日に日に膨らんでいく懐かしい感覚が邪魔して、どうしても頷けない。
本人に聞くのが一番の近道だってわかっているけれど、今みたいに友達に囲まれていることの多い彼に話し掛けるのはハードルが高いし、もし本当に人違いだった場合、勝手に重ねて見られてたなんていい気はしないはずで……。
考えれば考えるほど躊躇いが生まれて、なのに気になってしょうがなくてまた考えてしまう……そんな悪循環から抜け出せない。
ぐるぐる回り廻るそれにすっかり囚われて悶々としていると。
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