六月

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「あ…!血っ、血が出てますっ」 見つけたのは、腕捲りされた手首より少し下の擦り傷。 きっとサッカーをしている時に作ってしまったんだと思う。 私のバカ。 なんで今まで気づかなかったんだろう…っ。 だけど、慌てる私を余所に風祭くんはケロッとした様子で。 「あー。つっても滲んでる程度だし、こんなん慣れてっからへーき…」 「私、絆創膏持ってます!」 遮るように言って、鞄を開けて内ポケットを探る。 確かウェットティッシュも一緒にここに…… 「……ありました! よかったら私、貼りま…………しょう、か……?」 語尾が不自然に途切れ途切れになってしまったのは、風祭くんの様子がおかしかったから。 口は僅かに開いたまま固まり、目は見開いていて食い入るように一点に注がれている。 見ているのは……私の鞄……? でも、どうして……。 「……あの……?」 疑問に思いつつそっと声を掛けると、風祭くんはハッと我に返ったように何度か瞬きをして。 「……ワリィ。ありがとな」 どうやら「貼りましょうか」の言葉は聞こえていなかったらしく、私の手から絆創膏とウェットティッシュをするりと抜き取る。 だけど手当てを始めるでもなく、なんだか上の空だ。 「……えと……どうか…したんですか……?」 おずおずと聞いてみれば、風祭くんは「あー……」と呟き、少し何か考えるようにしてから口を開いた。 「……いやさ、俺と似たようなの持ってんだな、って思ってちょっと気になったっつーか……」 「え……」 似たようなの、って……まさか…… ざわざわと胸が騒ぎ始めるのと同時に、肩に掛けている鞄の取手に小刻みに震える手を伸ばす。 何にも代えられない、私の大切な宝物。 “それ”に触れた瞬間、風祭くんは、ゆっくりと『似たようなの』を掲げた。 「……ほら、これ」
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