六月

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「────っ!」 目の前でゆらりと揺れた、もの。 『これは友情の証だ』 甦る、声。 夜の空に一番最初に光る星──それを思わせる彼にピッタリだと選んだそのストラップを、見間違えようもなくて。 ずっと心にあったあの日が、鮮やかに色を増す。 ……シュウくん、だ。 風祭くんは、やっぱり、シュウくんだったんだ……! 嬉しくて、嬉しくて。 胸が詰まって……どうしよう、気を抜いたら泣いてしまいそう。 そんな私を知ってか知らずか、懐かしむような優しげな声がそっと上から降ってくる。 「な、似てるだろ?」 「……うん」 奇跡なんて大袈裟なものじゃないけど、まさかの偶然にあの時はびっくりしたよね。 「これさ、昔……ガキの頃に貰ったんだよ。 けど……そいつのこと、覚えてなくてさ……」 「……うん」 そっか、だから私を知ってる素振りがなかったんだね。 でも、それなのに、ずっと持っててくれたの? 「もう大分くたびれちまったけど……捨てらんねぇつーか……すげぇ、大事なんだ」 「……っ」 編んである糸も縒れて毛羽立って、チャームのメッキもところどころ剥がれて……それなのに、捨てないでいてくれたの? ……今でも、大事だって思ってくれてるの? シュウくん。 シュウくん。 ありがとう── シュウくんが話してくれるひとつひとつにたくさんの想いが溢れるのに、何一つ言葉にならなくて。出来たのは、涙を押し込めるように頷くことだけ。 「……って、何語ってんだかな、俺」 自嘲するようにそう締め括って、ストラップを引っ込められても、やっぱり胸が一杯で言葉は出なかった。 でも、それでよかったのかもしれない。 「私だよ。私があげたんだよ」なんて言って、無理に記憶を掘り起こして混乱させることはない。 人違いじゃなくて、シュウくんとほんとに会えたんだもん。 覚えててもらえなくても、あのストラップを大事にしてくれてる……もう、それだけで充分だよ。 ……その時の私は、確かに、そう思っていた────。 image=500571405.jpg
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