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思えば、今まで学校のことを聞かれたりなんて、ほとんどなかった。
聞かなくても、私の態度からなんとなくでも気付いていて……きっと、心配させていたんだと思う。
……嫌いになれないのは、そんなとこがあるからなんだろうな。
「真知留たんがされるがまま…だと……!?こ、これはハグもオッケーのサイン!?」
「違うから」
こんなとこは、ほとほと呆れてしまうけれど。
「やー、それにしてもその中谷ちゃん、一度会ってみたいわー」
「中谷ちゃん、て……。
私が美人さんだよって言ったからでしょ?」
「そんなこと!……もある、かなー。あはっ」
「…………」
本日2度目のジト目を向ければ、「や、ちょっとだけだし、ね?ね?お兄ちゃんとして、気になるってのが大半だから!」なんて言い訳を並べ、更には。
「だからさ、今度ウチに遊びに連れといでよ。なんなら、他の子も一緒にさ」
とんでもないことをさらっと宣った。
ウチに、ってそんな気軽に……!
も、勿論来てくれたら、すごく…すごく嬉しいけど……っ。
でも、中谷さんはともかく、他の子だなん、て……
「…………」
────って、いやいやいや!
なしなしっ、今の、なし!
自分の意に反してぽんと浮かんだ顔を追いやるように、ぶんぶんと首を左右に振る。
「──…だろ?ほら、俺も腕奮うしさ……って、真知留?どした?」
「え!?ど、どうもしないよっ?」
「けど、顔が赤…」
「あっ、もう駅だから行くね!」
お兄ちゃんの言葉を遮って、見えた駅へと脇目もふらず一直線。
バタバタとその構内へと駆け込んだ。
足を緩めながら鞄のポケットから定期を取り出し、改札を抜ける。
電車はついさっき行ってしまったようで、ホームの人混みはそれほどでもなく、私は漸くほっと息をついた。
それでも。
胸がドキドキと未だ早いリズムを打つのは、走ってきたからだけではきっとなくて……。
もう、お兄ちゃんがあんなこと言うから……っ。
さっき隅へと寄せたはずの顔が、またふわりと舞い戻るように浮かぶ。
と同時に、私の視線は線路を2つ挟んだ向かいのホームに自然と留められた。
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