七月

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風祭くんがシュウくんだとわかったあの日──家が真逆にも拘わらず送ってくれた彼と一緒に降りたホーム。 以来、彼がいるわけでもないのに、まるで日課のように毎朝つい目を遣ってしまうのは、私の秘密だ。 帰りはあの日と同じ、前から5両目の車両に乗っているのは……もっと秘密。 再会できた喜びを、ほこほことあたたかい気持ちを何度だって感じたくて……なんて、こんな一方的で独りよがりな行為を知られたら、きっと引かれてしまうから。 気のいい中谷さんだって、ましてや風祭くんなら尚更。 前より話したりできるようになったのは確かで、でも家に呼べるような間柄じゃ決してない。 それなのに「他の子も」と言われて彼が浮かぶなんて…… うあぁ…っ。 思い返したらますます恥ずかしくなって、再び熱くなった頬に指の背を当てる。 これだけ熱いんだから、顔はきっと真っ赤だ。 ホームには電車待ちをする人が大分増えてきたけど、時計やスマホを見たりと思い思いに過ごしていて、端から見たら一人でアワアワしてちょっとした不審者になってる私を気にする人は幸いにもいない。 よかった……。 でも、色々気を付けなきゃ。 不審者に見られないように、ってこともだけど…… 風祭くんへの言動は、特に。 風祭くんは、シュウくんだけど……彼は覚えてないんだから。 『俺たちずっと友達だろ!』 あの言葉が、嘘になったわけじゃないけど……今の関係はクラスメイトで。 私は「須賀」なんだから。 顔が見られる。声が聞ける。 離れていた頃に比べたら、ずっとずっと幸せなんだから…… 昔みたいに気軽に遊んだり出来なくても、「シュウくん」と呼べなくても。 そんなの、どうってことない。 そう言い聞かせるのに……どこでだろうか。 キシ、と何かが軋んだ気がした。
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