七月

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「……それ、癖?」 「え……?」 「何でも一人でやりたがるっつーか、遠慮しぃ、つーか……」 風祭くんは呆れたような、少しだけ苛ついたような…そんな溜息をついて、……そして。 「ちゃんと、言えよ」 真っ直ぐ、私を見据えた。 「自分でなんとかしようって姿勢は嫌いじゃねーけど、一人じゃ解決出来ないこともあんだろ? そういう時は言えばいいんだよ。頼ればいい。……迷惑とか嫌だなんて思わねぇんだから」 ……っ! まるで見透かされたみたいな言葉に、瞼が限界まで持ち上がって……心が、ふるえる。 ……そうだ。 彼は、シュウくんなんだ。 『どこにいても俺が絶対助けに行ってやるからな!』 私に言ったんだってことは覚えてなくても、言ってくれたことは確かで、そんな彼が迷惑だとか嫌だなんて思うはずがない。 そのことをわかっていたはずなのに……。 覚えててくれなかったことを、心のどこかで拗ねていたのかもしれない。 今はクラスメイトなんだと変な線引きをして、そうじゃなきゃいけないって、思い込もうとしてたのかもしれない。 信じておきながら、支えにしておきながら…… 『ずっと友達』でいるための、努力もしないで。 「……そ…ですよね。なんか私…変に考えちゃって……。 でも、あの…っ、これからはちゃんと言うように、します。 あ、勿論、許容範囲でというか……」 ばつが悪くて、たどたどしく窺うようにそう口にすれば、風祭くんは、ははっ、と声をあげて笑う。 「わかってるって。 つーかマジで言えよ?遠慮されるほうがよっぽど……」 「……?」 「い、いやっ、とにかくだ! こういう時は、ありがとうって任しちまえばいいっつーことだ!以上!」 何故だか少し顔を赤くして話を切り上げ、止めていた足を倉庫へと足早に向ける風祭くん。 その背中を追いかけながら、彼の言葉を実行する。 「風祭くんっ、ありがとうございます……っ」 箱を持ってくれたことだけじゃない。 距離を測りあぐねて、一歩も二歩も引いてた私に近づいてくれたこと。近づいてもいいって教えてくれたこと。 それらを含めたことに、彼は気付いたかな? そんなことが気になっていて、浮かれていて。 「ありがとう、だけでいいっつーの……」 更に浮かれそうな小さな呟きは、聞こえていなかった。 image=500934191.jpg
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