3周目

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《白川美姫・過去1》 彼女は夢を見た。それは近くもなく遠くもなく…しかし確かな記憶・・・。 美姫の両親は喧嘩ばかりしていた。それも美姫を理由にして。よくある話だ。 「なんで子育てを手伝ってくれないの!少しは家事をやろうとか思わないの!」 「だれがこの家を支えてると思ってるんだ!俺は朝早くから夜遅くまで働いてるんだぞ!家ぐらい休ませろよ!」 そんな事を美姫は小さい頃から聞いていた。そして彼女は幼いうちから悟っていた。この世に自分の味方になってくれる人はいないと…。 小学校に上がり2年生にもなると起こり始める現象がある。美姫はその現象に巻き込まれてしまった。朝、学校にいくと上履きが無くなっている。教室に行くと机の上に花瓶と一輪の花が置いてある。そして同じクラスの女子生徒からの直接的な攻撃。 いつもは澄ました顔をして動じない美姫だが1度だけ反撃をしたことがあった。それはいじめが始まって半年が過ぎた辺り。小学2年秋だった。 10月3日。この日は美姫にとって1番幸せな日だ。いつも喧嘩ばかりしている両親が唯一優しくしてくれる日。そして7回目のその日に初めて美姫は両親から洋服のプレゼントを貰う。赤とオレンジのチェック柄のスカートだった。美姫は嬉しくてしょうがなかった。そして何より貰った洋服を早く着て外に出たかった。そしてその服を学校に着て行ってしまったのだ。現象を作り出している奴らからすれば格好の餌食だ。そしてあろう事かその現象を作り出している奴らはそのスカートをカッターで破いてしまったのだ。そこから美姫の中の歯車が狂いだした。美姫はその瞬間を見ると目の前が真っ赤になっていくのを感じる。そしてそれと同時に意識が薄れていく…。次に気がついた時は奴が口や鼻から血を出して地を這っている様子。そして美姫の事を畏怖している周りの奴ら。美姫は何もかもを察した・・・。 そしてその事がきっかけとなり両親は離婚。父親について行った美姫はそれまで住んでいた街を離れいろんな街を転々としていく日々に。そして美姫は人を誰一人として信用しなくなった……彼女と出会うまでは。 転機になったのは高校三年の春の事だった・・・。
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