3周目

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《福弥爾郎・3》 「爾郎ー。お手紙来てたよー。」 家に帰ると母はまだ夕食の準備中だった。リビングの机の上には白い横長のエアメールが置いてあった。 「まだ夕食かかりそうだからゆっくり読んできなさい。」 キッチンで揚げ物をしている母は目もこちらに向けず言った。今夜は唐揚げのようだ。 自室に戻り、楽な格好に着替えた後ベッドに座りエアメールの封を切った。中には一枚の手紙が入っている。間違いない、サトリ先輩の字だ。 「Guten Morgen!!かわいい後輩ふくろうクン!私は今ドイツにいます。コチラは少し日本より寒いかな?分かんないけど。まだまだ世界は広いです。あと、コッチでもまた友達ができました~!今はその子の家に居候してまーす! …んで、ドイツで思い出したんだけどね!私が小学生の時から大事にしてたラベンダーの栞。あれどこでなくしたのか思い出したの!たぶん高校の旧図書館にある『三文オペラ』って本を読んだ時に挟んだまま返却しちゃったとおもうの!だからさ、ちょいと取ってきてくれないかなー?今度帰ってきたら受け取るから!それじゃ、Tschuss~☆」 ………相変わらずのようだ。それにしても旧図書館、つまり第二図書館に忘れ物を取ってこいとはまた人使いの荒い人だ…。仕方ない、今度暇な時にでも第二図書館に足を運ぶか。どうせ帰ってくるのは先だろう。腹も減ったし、下に降りよう…。 しかし、大事なものを忘れるほどサトリ先輩は記憶力が悪かっただろうか?
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