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《朝宮神奈子・3》
朝宮は出てすぐに歩き出した。
(さっさと保健室行って、図書室に戻るとしよう。にしても、人一人抱えるのは、何年振りだ…?昔は、千代子を抱えてあげてたな。)
今は、もう成長したであろう妹のことを思い出しながら朝宮は白川をジッと見つめた。本当なんで倒れていたのか、朝宮には見当もつかない。それも、あの幽霊に聞けばわかることを朝宮はわかっていた。あの弱気そうな幽霊と会話すると思うと骨が折れそうだと朝宮は笑った。白川を抱え直し、保健室までの道のりが遠いと感じた。朝宮は特に怪我もせず、持病もないので保健室にはそうそう行かない。そのせいか、長く感じるのだ。白川は、小柄で軽いため、そこまで苦労はしない。が…。
「………先生に見られないといいけどな。」
見られたら、何があったとか、もう時間過ぎてるだの、ベラベラ言われるに決まってるからだ。朝宮はそれだけは避けたいと心底思いながら、廊下を曲がる時、そっと覗いて誰もいないのを確認した。
そっと歩いていき、ゆっくりとやっと着いた保健室の扉を開いた。
(よかった…まだ施錠されてないな。)
ベッドに倒れこむように、膝をついて、白川をそっと横に倒した。
「ふぅ…。白川先輩、まだ目覚めなさそうだな。」
座って腰を落ち着けさせた時、扉の動く音がして、反射的に白川を布団で隠して立ち上がる。冷や汗が垂れる中、扉の向こうから背の高い男性があらわれた。
「………朝宮?お前何してるんだ。」
「く、九条先生…。」
自分の数学の先生を見つめては、しまった、と心の中で舌打ちをした。会いたくない教師だ。先生の中では緩い方だが、さすがに下校時間を過ぎてては許してくれないだろう。
「……その、絆創膏ほしくて、あ、もう、用は済んだんで大丈夫です。」
とってつけたような理由、九条先生は訝しげに朝宮を見たがすぐに、そうかと返事をした。そして、すぐに咎めるために口を開いた。
「最終下校過ぎてるんだから、さっさと帰れ、ほら!」
朝宮は一番言われたくない言葉を言われてどうしようどうしようと返事を考えるが…。
「え、あ、いや、その……はい。」
結局、抗うだけ無駄だ、と結論を出した。内心で白川に謝りつつ保健室を後にして、そのまま下駄箱へと向かうはめになった。
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