第1章

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 妻が欲しいと言っていた掃除機。  今までのはかなり古くなってたし、ちょうどボーナス時期だったから、思い切って購入した。  軽いし音も静かだし、何より吸引力が抜群だと、妻は大喜びだ。その顔を見ていると、心から、買ってよかったと思う。  普段は家事なんてろくろくしないけれど、こうも喜ばれると、掃除の一つも手伝いたくなる。  とはいえ、いくら音が静かでも、夜に帰ってから掃除機をかけるのは近所迷惑だよな。だから、休みの日にこっそり手伝うことにした。  晴れた日曜の朝。はりきって掃除機をかける。妻の言っていた通り吸引力が抜群だから、面白くなって、壁やら窓やら天井やらにも吸引口を向けた。  埃がぐんぐん吸い込まれる。おかげで部屋中がかなり綺麗になった。妻は喜んでくれるだろうか。  しかし、待てど暮らせど妻は戻って来ない。  さっき、玄関の扉に掃除機を向けていた時、内開きのドアが開いた向こうに、一瞬姿が見えた気がしたけれど、確認しても外にはいなかったしなぁ。  …掃除をしまくったせいか、掃除機がパンパンに膨らんだ気がする。でも、俺はゴミの取り出し方は知らないんだよな。  掃除機をかける楽しさを覚えたので、知っておいた方がいいよな。妻が帰って来たら開け方を教えてもらうとしよう。  それにしても…あいつ、帰って来ないな。いったいどこに行ったんだろ。 掃除機…完
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