通勤電車の妄想恋

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初めて聞いたスーツ王子の声は、想像よりも低くて、聞き取りやすい心地のいい音だった。 まるで、乙女ゲームに出てくる男性声優のように色気もあって、思わずポーっと惚けてしまった。  ハッと我に返り、言葉の意味を考える。 え、ナンパ? いやいやまさか、今まで一度もナンパなんてされたことないのに、超絶イケメンのスーツ王子にナンパされるわけがない。 「……私ですか?」  思っていることをそのまま口にすると、スーツ王子は呆れたような顔で私を見た。 「当たり前だろ」  いや、そんな馬鹿にしたような言い方しなくても。当たり前って言われたって、当たり前なのか? なんか私が空気読めない奴みたいな雰囲気になってるけど、スーツ王子が私に一体何の用があってお話をするのですか。 「時間はありますけど……」  あなたが私と話をしたいというなら、仮病を使って会社を休んでも構わないくらい時間ならたっぷり差し上げますとも。 「なら良かった。あのさ、前から気になってたんだけど……」  嘘っ!気になってた!? 私のことを!? まさかの妄想が現実にっ!?
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