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動揺する私に、スーツ王子は黙って私の手を握った。
『こうしてれば、怖くないだろ』
そう言って、ニコリと笑うスーツ王子。
手を繋いだまま線路を歩き、駅のホームに到着した。
『ありがとうございました』
お礼を言って、手を離そうとしたけれど、スーツ王子は手にぎゅっと力を込め、離してくれない。
『あ、あの……』
『この手は離さないよ。ようやく掴んだんだから』
どういう意味だろうと思って、スーツ王子の顔を見つめると、彼は不敵な笑みを浮かべ、腰を屈めて私の顔に近づくと、そのまま唇にチュッとキスをした。
『ずっと君のことが好きだったんだ』
……妄想終了。
キャーもう、ヤダもう。
だから聞いちゃう、ソレって言ったのに。
どうしてもって言うからさぁ。(言ってない)
まあ、現実にはあり得ないんだけど。天地がひっくり返ってもあり得ないんだけど。
だって、榊原蒼紫様に似てるくらいイケメンの彼が、私なんかを好きになることをまずありえない。
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