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携帯の画面に写っていたのは、 味噌ラーメンだった。 一瞬で胃が切なくうずき、 口からため息がもれた。 夕陽のような半熟の玉子、 鶴の乱舞のごとき細切りのネギ、 白い柔肌をチラリと魅せる厚ぼったいチャーシュー、 ぷるんっと跳ね返りそうな黄金の麺。 そして、 そのすべてを包みこみ、 ここがアンタの居場所なんだよ…… と言わんばかりの「あぶら」 あぶらは語りかけてくる。 「アンタのこと、 悪く言うヤツもいるみたいだけど、 ワタシは分かってるよ。 アンタ、この時代に珍しい、 真心のある人なんだって。 そうやってセルフで水注ぐときもサ、 狭い店の中で、どうやって人の迷惑にならないか、 こぼさずに、それでいて素早く注げるか考えてさぁ、 ちょっと物足りなくて、 ギョウザとかライスとか頼む時も、 ちゃあーんと、 店の人が手の空いたスキマを狙って声かけるもんね… 隣でバカな女子が 『ここぉかなり濃くないですかぁ?』なんて、 食券機に思いっきり『濃厚味噌』て書いてあんだろ! って言いたくなる時もサ、 『初心者にはキツいよね…』 なんて、優しい言葉を心でつぶやいてみてサ、 バシャバシャ写メ撮りまくってる横で、 ひたむきに麺と向き合ってるじゃないの。 そして、食べ終わったら、 グッと水あおって、すぐ立ち上がって、 ドンブリをカウンターに上げてさ、 ろくろく目も合わせないで、 『ごちそうさん』って。 ワタシら、そういうアンタのこと、 いつも見てんだからね…」 涙が…あふれた。 胃も号泣している。 震える手で、写メの送り主に返信した。 そのヒトに、会わせて下さい! オレだって伝えられなかったことが、 たくさんあるんです! いつもいつも あの暖かさに甘えて、 『やべぇ太る』 とか 『前と味変わった』 とか そのくせ、週五で通って…… だけど今なら! 今なら、素直になれる気がするんです! 返事がきた。 ーー地元のラーメン屋ですーー …じもと? ーー先日里帰りした地元、札幌のラーメンですーー 初対麺だったか……
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