べっこうさん

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呼び止められて、振り返るとそこには誰もいなかった。 美枝はうっすらと額に滲む汗を首に巻いたタオルで拭い、小石が荒く散らばる登山道をゆっくり登り始めた。小鳥が騒がしくさえずり、朝の木漏れ日が眩しく降り注ぐ。登山靴が砂利を踏みつけ、ザクザクと音を鳴らす。もう三時間ほど、美枝は歩き続けていた。 「おじいさんや、もう少しですからね」 美枝はぽつりと呟いた。
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