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山道の横はゴツゴツした岩がむき出しになった急な斜面だった。崖の下に流れている細い川が、朝の光を反射してキラキラと輝いていた。静まった空間に、小川のせせらぎと美枝の足音だけが響いた。
美枝はおもむろに口を開いた。
「初めてこの山を登ったのは、今からは想像も出来ないくらい若い頃でしたね。あの頃は、この山はもっと赤みを帯びていて、みんな『べっこうさん』って呼んでたわね」
「そうだったな」
「あの頃はべっこうさんに登る人も多かったのにね、もう今じゃあ、だあれもいないようねえ」
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