誰も知らない救世主

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 何の冗談かと笑ったが、あいつはいたって真面目だった。  少し考えて、2012DA14という小惑星がもうすぐ地球のそばを通過するとのニュースを思い出した。極めて珍しいほど接近し当たれば大参事だが、衝突の可能性は限りなく低いとされていたものだ。  そのことかと訊いてみると、彼はそうだと答える。  馬鹿げた話なのにあまりにも本気の口調なので心配すると、やがて彼は諦めたように言った。 「おまえも憶えてないのか、残念だけどじゃあしょうがない。ならぼくだけで行くことにするよ。一人でうまくできるかわからないけど、うまくいったら、たまにはぼくのことも思い出してくれよな!」  そして通話は切れたのだ。  最後は、妙に清々しい口調だった。
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