誰も知らない救世主

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 おかしなことに、彼からの着信履歴は残っておらず、どうやって電話をしてきたのかさえも謎だった。  翌日、二〇一三年二月十五日。  2012DA14とは別の隕石が、ロシアのチェリャビンスク州に落下、空中で爆発した。2012DA14の方は、その後何事もなく地球の横を通り過ぎていった。  チェリャビンスク隕石は器物の損壊や怪我人は出したものの、死者は出さずに済んだ。  二つの隕石が同時期に地球のそばを通り、一つは人のいる近辺に落ちて被害をもたらすというのは極めて珍しい現象だったが、分析によれば両者の関連はなくただの偶然だという。  けれどもチェリャビンスク隕石の接近は、公式には誰も事前に気づいていなかったはずなのだ。そう、あいつ以外は。
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