姉の結婚

2/24
前へ
/123ページ
次へ
本日4歳年上の姉が結婚する。 姉がずっと憧れていたハワイの地で。 父の友人の持ち物であるコテージを借り切って家族や親しい友人だけを招いた、派手ではないけれど心から姉たちを祝福してくれる人たちだけが集まる温かな式になるはずだ。 この日のために姉を始め私たち家族も色々と手伝ってきた。素敵な式になればいいと心から思っている。 「お姉ちゃん。ネイルどう?問題ない?」 大きな鏡台の前でヘアメイクの最後の仕上げをしてもらっている姉にそう声をかけた。彼女の手を取りネイルの様子を確認する。 パールホワイトをベースにキラキラのストーンを散りばめたウエディングネイル。式の後はお庭でのガーデンパーティが行われる。きっと指先に受ける太陽の光が姉を彩ってくれるはずだ。 「たぶん大丈夫だと思うけど‥どう?」 今日の姉は本当に綺麗。結婚式の瞬間って女性が人生で1番輝く時なのかもしれない。 「うん。大丈夫そう。とってもキレイ。」 「ホント?よかった。」 姉が本当に嬉しそうに微笑むので私も同じように微笑み返した。こんな時やっぱり幸せを感じる。ネイリストとして自分も1つ姉にキレイの魔法をかけられた、そんな気がするから。 「じゃ、先行ってるからね。」 「うん。」 私は姉にそう声をかけると部屋のドアを開けた。支度を手伝ってくれていた美容師である姉の友人たち もいつの間にかお庭へと向かったようだ。部屋には姉が1人残される。 ドアの前で振り返り、姉の後ろ姿を見つめる。純白のウエディングドレスに包まれた姉は神々しくさえ見えた。 この日を待ってた自分と、一生この日が来なければいいのにと願った自分と。一体どっちが本当の自分なのだろう。 そんな複雑な思いを胸に抱きながら、私はそっと部屋のドアを閉めた。ドアが閉まる瞬間姉のベールに施されたラメが、窓から差し込む太陽光を受けてキラリと光った。 その光を私はきっと一生忘れない。 そう思った。
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

91人が本棚に入れています
本棚に追加