偶然か。必然か。

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次のお休みの日、私は舞子と一緒に夕食の買い出しに出かけていた。 お休みが一緒になるのは久しぶりのことだったので2人でのんびり晩酌でもしようという話になったのだ。 もうかなり日が傾いていたけどものすごく蒸し暑くて、スーパーでアイスを1本ずつ買って食べながら帰った。 舞子とは中学からの親友で、今までも散々いろんなことを話してきたのに、まだこんなにも話すことがあるのかというくらい話が尽きることがない。 些細な事柄でも話が何倍も膨らんでしまうことに時々自分たちでも不思議でならないことがあるくらいだ。 その時も早くビールが呑みたいとか、あのお店に可愛いサンダルが並んでたとかやっぱりそんな他愛もない話をしていた。 しばらく歩いて家の前に着くと引っ越しトラックが止まっていて、こんな夕方に引っ越しなんて珍しいねなんて話しながらエレベーターに乗り込んだ。 「そういえばうちの隣空き部屋だったよね?そこに入ったのかな~?」 「かもね。どんな人かな?」 そんな話をしながら自分たちの部屋に向かうと、案の定隣の部屋のドアが開いていて、養生がしてあり、引っ越し業者が出入りしていた。 「あ、それはこっちにお願いします。」 仕事の邪魔にならないように廊下の端に寄って隣の部屋を通り過ぎようとしたとき、聞き覚えのある声に私の胸はドキリと躍ねた。 慌てて来た道を戻り隣の部屋を覗き込んだ。 するとそこには思った通り、ハワイでの一夜の情事の相手である結城さんが頭にタオルを巻いて、汗だくで段ボールを運んでいた。 「あぁー!?」 私はまるで化け物に遭遇したかのように彼を指差し、叫び声をあげるしかなかった。
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