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庭に向かうと祭壇やバージンロードがキレイに整えられていて、もう後は姉の登場を待つばかりとなっていた。
今回結婚式の会場となるコテージの持ち主は父の古い友人で、私たちも子どもの頃から可愛がってもらっていた。
姉がコテージを借りたいことや、会場の準備をお願いした時も本当に嬉しそうに夫婦で引き受けてくれたらしい。ライトブルーとホワイトを基調にした会場全体のアレンジメントは姉のイメージにぴったり。会場の様子を初めて見た姉もとても嬉しそうだった。
私の時も準備してあげるって言ってくれたので楽しみではあるけれど、本当に自分にそんな日が来るのかわからなくて、怖くて、考えたくない。
自分の席に向かおうと歩みを進めた。ふと本日のもう1人の主役、新郎の姿が目に入った。緊張の面持ちで祭壇の前に立っている。私の視線に気づいたのか、少し心細そうな笑顔を見せた。
そんな彼の表情は初めて見た気がして、少しでも元気づけてあげようと笑顔で小さく手を振る。彼もまた笑顔で軽く手をあげるだけだけど挨拶を返してくれた。
2人の間に特別な空気が流れた気がして不覚にも嬉しくなる。もうこの想いを体から消してしまわなくてはいけないのにこのままじゃ全然ダメだ。
嬉しさと恐怖がせめぎ合う。なんて厄介な感情なんだろう。
今日姉は私の幼なじみと結婚する。
つまり新郎新婦である2人も幼なじみというわけだ。実家同士も隣同士で、親同士もとても仲が良い。そんな2人を誰もが心から祝福している。
でも私は‥?
姉の結婚は心から祝福している。よかったなと思える。
でも彼が相手だと‥その事実を目の当たりにすると胸がきゅぅっと痛む。
だって私は‥彼のことがずっとずっと好きだった‥。
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