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年末年始は、私の実家で過ごした正仁さん。自宅に帰ってからは毎日暇そうにしているので、これはチャンスだと思った。何とかして、例の本を読ませるために――
「確か、11月号だったような?」
会社の同期から何冊か、レディコミの雑誌を借りていた。借り物なので年末掃除した時に、本棚の上段にまとめて、置いていたのだけれど。
「む~……あとちょっとで、取れるのにっ」
背伸びして、ちょっとずつ本をずらしていく。ちょちょいの、ちょい!
「何をしてるんです? 見るからに効率の悪いことをして」
見かねた正仁さんが声をかけながら、優しく手を貸してくれた。左腕で私の肩を抱き寄せながら、右手で本を取ってくれる。
普通に取ってくれればいいのに、こうやっていちいち、スキンシップするんだから。
「有り難う……」
単純な接触だけで赤くなってる顔を見られないように、俯いてお礼を言った。
(――さて、問題はここからだ)
本を私に手渡してリビングのソファに座り、再び新聞を読み出した正仁さん。意を決して話しかける前に、読んでもらいたい箇所を探して、と。
「あのっ正仁さん、熱心に新聞読んでるトコなんですけど是非、見て欲しいマンガがあるんです!」
「暇つぶしに新聞を読んでいただけなんで、別にいいですよ」
私に向かって右手を差し出してきたので、読んで欲しい部分を思いっきり開いてから、ずいっと手渡してあげた。
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