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冷たい風が温かい風と混じりあい、夕姫と実藤に、ゆっくりと触れる。
「ああ、もう夕暮れだな」
夕姫にせがまれるまま話していた実藤は立ち上がった。
そして、小窓の前まで歩く。
「夕姫の色だね」
「私の…色?」
「夕姫の髪と瞳の色だ」
夕姫は目をしばたき、自分の長い髪を見下ろした。
それは、とても鮮やかな色をしていた。
銀色を主体とした温かい淡黄が、下にいくにつれ熟した杏色になり、やがては燃え立たせた紅葉色になる。
それを見下ろす夕姫の右目は紫を帯びた深い蒼で、中央には白銀が煌めいている。
左の瞳は、春霞のように柔らかな色調に、惜しげもなく紅がばらまかれている。
そして中央には、黄金が存在を主張していた。
その異様な姿で生まれた夕姫は、両親に悪魔の子だと言われ、捨てられた。
そんな夕姫を引き取ったのが、実藤の父親だった。
「…とても気味が悪い姿よね」
「そうかな?僕は夕姫の髪も瞳も綺麗だと思うよ」
実藤は不思議そうな顔をして、夕姫の方に振り向く。
「…夕暮れは夜を連れてくるわ。深い闇を連れてくる」
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