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「けれど、僕は夜に安らぎを感じるよ。そして、夜は朝を連れてくる」
実藤は優しく微笑み、再び前を向いて開いていた窓を閉め、カーテンも閉めた。
そして夕姫の前に戻り、夕姫の頭を優しくなでる。
「少し寒くなってきたね。温かくして寝るんだよ」
「…うん」
「今日はもう帰るよ」
実藤はカバンを手にとり、夕姫から離れていった。
夕姫はほんのり残ったぬくもりを噛み締め、実藤を見送る。
「…また明日来てくれる?」
「うん、明日も明後日(アサッテ)も、明明後日(シアサッテ)も。毎日会いに来るよ。だから、ぐっすり眠って。大丈夫だから、安心していいんだ」
扉の閉会音を最後に、実藤の姿は消える。
夕姫は淋しそうにうつむく。
だがすぐに顔をあげ、窓に駆け寄る。
最後の温かさを得るために、実藤の後ろ姿を見送った。
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