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夕暮れ時の太陽がゆらゆら揺らめいている。
――まだ、ここにいたい
そう叫んでいるような太陽を闇が覆い尽くしていく。
やがて今度は月が空の覇者となる。
――かしゃんしゃん
ぼんやりとベッドの中でうつらうつらしていると、何かの音が響いた。
夕姫はゆっくり目を開け、何者かの到来を迎えた。
その時、一瞬にして辺りは暗闇になった。
全ての電気が消えたのだ。
夕姫の息づかい以外、音がしない。
ブレーカーが落ちたなら、騒ぎになってもいいのに、不気味に静まり返っている。
「また、来たの?暇なのね、かみさまも」
かしゃんしゃん
鈴の音がした。
それはどこか懐かしくて、悲しく感じた。
かしゃんしゃん
かしゃんしゃん
やがて夕姫の目の前に、ぼうっとした光が現れた。
光は人の形をしていた。
かしゃんしゃん
『………夕姫』
かしゃんしゃん……
光に包まれていたのは美しい青年だった。
『私は夕姫の憑依神なのだ…常に共にいるべきなのだ…』
「さっきはいなかったじゃない」
『…あの男は苦手だからな…嫌な過去を思い出す』
自称神の青年は首をかしげる。
青年が少しでも動くと、光は生き物のようにゆらゆら揺れ、ぶつかり合った。
「実藤は私の大切な人なのに…悪く言わないで」
『…私はあの男の気配が恐ろしい』
「…かみさまが、人間を怖がるの?」
神と名乗った青年は目をほそめ、窓に映える夕暮れの空を静かに見た。
『…お前は真実は知らない方がいいな』
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