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私は、彼女の前に行く。
「言えないことが、悪いことなんかじゃないんだよ」
彼女は、下を向いたままだった。
そして、私は痛感した。
彼女が、私にカミングアウトした時、どれだけの勇気が必要だったか。
私は彼女の味方でありたいと思った。
側にいたいと思った。
「あまり、私に優しくしないで」
と、彼女は顔を上げる。
距離が近かった。
しかし、この前のように、驚いたりはしない。
今は、この距離が合っている気がした。
私は、彼女を抱き寄せる。
彼女は、抵抗しなかった。
「優しくさせて」
と、言って回している腕を強くする。
すると、彼女も私に腕を回してくる。
私は、彼女のことが好きだ。
ずっとずっと前から、気づいていた。
でも、まだ彼女に好きだと伝える勇気がでないのは、なぜなんだろう。
いいや、本当はわかっている。
ただこわいのだ。
彼女を幸せにできる、自信がないのだ。
私は、あまりにも弱すぎる。
生まれたばかりの子鹿のようだと笑いたくなった。
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