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10話 私と彼女
遠くで英語を話している声が聞こえる。
私は、机に肘をつきながら、ぼーと窓の外を見ていた。
いや、正確には外を見ていたわけではない。
どこかを見ていて、それが何なのか自分でもわからなかった。
気がつくと、肩を揺すられている感覚がして、ハッとする。
上体を上げると、そこにはあかりがいた。
「ゆいが寝るなんて珍しいね」
そこでやっと気がつく。
「寝てたんだ私」
それに、半分笑った顔をしたあかりがこう言った。
「まだ寝ぼけてる?」
私は、作り笑顔をして、返す。
「そうかもね」
「ノートは後で見せてあげる、最近なんか疲れてるみたいだし」
と、あかりは、全部お見通しなのよ、と言った感じで、にやりと笑う。
それに、私は素直に「ありがとう」と言った。
あかりの言う通り、私は最近疲れている。それどころか、よく眠れていない。
彼女のこともあるが、家のことも十分にある。
身体と気持ちは、違うと痛感させられる。
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