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すると、彼女の後ろの方から「川上!いくぞー!」という呼ぶ声が聞こえてくる。
彼女は振り返る。
そして、「それじゃ、またね」と、言って、私に背を向ける。
私は徐々に小さくなる彼女の姿を黙って見ていた。
隣には、名前も知らない男子と笑い合う彼女がいた。
私は踵を返す。
そして、自転車を出してサドルに跨り、地面を蹴飛ばして、ペダルを漕ぐ。
バイトへと向かう道のりが、いつもより静かに思えた。
数日が経ち、水曜日を迎える。
図書室の扉を開けようとして、やめた。
中から声が聞こえる。
私は、ダメだと思いながらも、息をひそめる。
「あんたって、ゆうきくんと付き合ってるの?」
と、女の子の声がする。
その次に、面倒くさそうな彼女の声が聞こえる。
「付き合ってないけど」
「じゃあ!なんで、この前二人っきりで遊んでたのよ!」
と、今度は別の女の子の声がする。
いったい何人で、彼女を責めているのだろう、と思うとゾッとした。
「ゆうきに誘われたから行っただけ」
と、さっきと同じトーンの声がする。
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