11話 美術室

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それをしっかりと聞いていた琴音が、言う。 「なに笑ってるのよ!」 合田くんは、はっとする。 「ご、ごめんなさい」 と、慌てて言ったが、半分笑いが混じっていた。 「こっちきなさい、怜くん!」 と、琴音が呼ぶが、全く来ようとしない合田くんにしびれを切らして、歩き出す。 それを、合田くんは走って逃げた。 「怜!待ちなさい!」 と、琴音も走り出す。 「謝ったじゃないですか!」 と、言いながら、二人は美術室で走り回った。 ここは小学校かとツッコミたくなったが、面白いので、言うのはやめた。 そして、少し大きな声を出した。 「今日はありがとう!」 すると、二人の動きが止まって、こちらを向く。 「私もありがとう!」 という返事が返ってくる。 そして、私は手を振って、美術室を後にした。 私は長い廊下を歩き出す。 誰もいない町。 人はいるはずなのにいない町。 隣に誰がいるかなんて関係ない。 隣にいる人って、本当はとても大切な人なんだ。 私は、そんな言葉を頭の中で繰り返した。 彼女に会いたくなった。
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