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それをしっかりと聞いていた琴音が、言う。
「なに笑ってるのよ!」
合田くんは、はっとする。
「ご、ごめんなさい」
と、慌てて言ったが、半分笑いが混じっていた。
「こっちきなさい、怜くん!」
と、琴音が呼ぶが、全く来ようとしない合田くんにしびれを切らして、歩き出す。
それを、合田くんは走って逃げた。
「怜!待ちなさい!」
と、琴音も走り出す。
「謝ったじゃないですか!」
と、言いながら、二人は美術室で走り回った。
ここは小学校かとツッコミたくなったが、面白いので、言うのはやめた。
そして、少し大きな声を出した。
「今日はありがとう!」
すると、二人の動きが止まって、こちらを向く。
「私もありがとう!」
という返事が返ってくる。
そして、私は手を振って、美術室を後にした。
私は長い廊下を歩き出す。
誰もいない町。
人はいるはずなのにいない町。
隣に誰がいるかなんて関係ない。
隣にいる人って、本当はとても大切な人なんだ。
私は、そんな言葉を頭の中で繰り返した。
彼女に会いたくなった。
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