9話 彼女の家

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「私が、同性愛者だってことよ」 と、彼女は苛立ちを隠しきれない、という口調で、私を見る。 やはり、あの時の視線がよくなかった、と心の中で反省する。 「思ってないよ、そんなこと」 と、私は言う。 「うそ」 と、納得のいっていない顔をする。 「うそじゃないよ」 私は、嘘でもそうでなくても、ここで肯定してはいけない気がした。 すると、彼女は少し大きな声を出す。 「うそ!」 私も、負けじと声を出す。 「うそじゃないよ!」 また彼女は大きな声を出す。 「うそよ!!」 私も意地をはる。 「うそじゃないってば!!」 彼女は、途端に悲しい顔になり、弱々しく下を向く。 「…うそつき」 と、消えそうな声で言った。 私は何も言い返せなくなった。 「言えないわ、だってこわいんだもの」 と、震えた声で続ける。 私は、彼女との距離を寂しく感じた。 「…言えなくて当然だよ、こわいよ、誰にだって人に言いたくないことはあるし、言いたくても言えないこともある。それを誰が責めれるの?」
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