Side 宮本茜

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Side 宮本茜

私はいつもの教室に入った。 もうすぐこの場所から去っていくのかと思うと、少しだけ名残惜しい。 そう考えているからか、教室の景色が少し新鮮な気がした。 単純に、少し長い休みがあったからな気もするけど。 そう、今日は卒業式の前の最後の登校日だった。 「あ、茜。おはよう。」 「おはよう、春。」 こうしてこの3年3組の教室で友達と会話するのも、もうなくなるんだな。 あぁ、まだ終わったわけでもないのに、少し感傷的になってる。 いつも以上に綺麗に掃除された黒板。 いつもより物が少ないロッカーの中。 何も貼られていない掲示板。 周りを見渡してみると、そんな終わりの兆し。 その中にいつもと違う物を見つける。 それは教卓の横に置かれた、大きめのダンボール。 その異様さからか、近くには誰もいない。 私は指を指して、友達に聞いてみた。 「春、あれは?」 「分からない。  クラス委員の人へって封筒が教卓の上に置いてあったよ、クラス委員さん?」 はいはいと返事をして、私は席を立つ。 クラス委員へと書かれた封筒がダンボールの上に置いてあった。 その封筒を持ち、席に戻る。 「何だろうね、これ?」 「開けてみればいいんじゃないかな、茜。」 春に言われて、私は封筒を開けた。 ・・
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