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おじいさんは、じぃーっと俺達を見ると
「邪念はなさそうじゃな…。」
「えっ…あの、どういう意味ですか?」
何事も疑問には答えがほしい永瀬君は、おじいさんに尋ねる。
「ここは怨念の溜まり場じゃ。若い者が時々、肝だめしに来るんじゃがな…邪念がある者がここに入ったら取り込まれてしまうんじゃよ。みんな正気を失って、今では生きる屍じゃ。」
…………。
「怖いですね。あの、もしかして、菊野様の話を御存じではありませんか?」
「菊野様…。」
俺はすぐにでも帰りたくてしょうがなかった。
が、おじいさんが菊野様と呟いたのを聞いて、おじいさんは知っているんだと直感した、早く帰りたいのに少し聞いてみたいと思ってる自分に驚いた。
「あのっ…。」
俺が話しかけようとした時、おじいさんが険しい顔で俺達を見た。
「お前さん方、何を探っているんじゃ。」
「僕達は怪しい者ではありません。取材でここに来ただけです。」
永瀬君が慌てて説明した。
「取材じゃと?話すことはない!」
頑なな態度が永瀬君の興味を引くとは、知らないおじいさんは、永瀬君のトーク術に、まんまと嵌まっていく。流石です。永瀬君。
結局、おじいさんが折れた…。
記事にするのはダメだと前置きをして、おじいさんは、こっちじゃと俺と永瀬君を道の端に連れて行った。
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