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「それから、菊野様はどうなったのですか?」
「若様の奥方になられて暫くは幸せに暮らしておったんじゃが、姫様の執着は普通では考えられないものだったんじゃ…。
想いを寄せていたはずの若様を呪い殺してしまったんじゃ。菊野様は、心を病まれてな。
姫様は気が触れて笑いながら自分に火をつけて自害したんじゃ。
だがの、これで終わりではなかったんじゃ。
和尚様が姫様の怨念を封じ込めた人形が人に悪さをするようになったんじゃ。供養を続ける和尚様は日に日に弱っていっての…とうとう亡くなってしまったんじゃ。
和尚様が死ぬ間際に言った言葉の意味が分かったのは後々のことでの…。」
「和尚様は何と言ったのですか?」
「菊野様を…菊野様を供養してくれと言ったんじゃよ。」
「菊野様をですか?供養って、菊野様は生きていますよね。」
「そうじゃ。だからみんな、姫様の怨念の封じ込められた人形を供養して菊野様を守れという意味だと思っておったんじゃ。」
「違っていたのですか?」
「そうじゃ。違っていたんじゃよ。和尚様の言葉通り、菊野様を供養するというのが正しかったんじゃ…。」
「どういう事ですか?」
永瀬君のピンポイントの質問が俺の代弁をしてくれてるかのように小気味よい。
「菊野様は…若様が亡くなってすぐに、既にこの世の人ではなくなっていたんじゃよ。信じられない話だが、普通に暮らしておったんじゃ。だから、誰も気づかなかったんじゃよ。」
「えっ…。」
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