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目的地に着いたのは14時を少し過ぎた頃だった。
「先生、疲れましたね。今日はこの民宿に泊まりますよ。」
バスを降りたら民宿の人が迎えに来てくれていた。流石、永瀬君。段取りが良くて助かるよ。予約の時点で時間を決めて迎えを頼んでたらしい。
帰りは遅くとも14時5分のバスに乗らないと帰れなくなる。凄い場所だ。この辺の人達は車は必需品だ。
緑に囲まれ、うん、確かに空気はうまい。だが、何もない…。小さな村だが道路は舗装されている。店は萬屋が一件あるという。
「先生、何もないと思ったでしょ、実は人気のパワースポットがあるんですよ。」
「へぇ…。」
「何ですか、その興味なさげな返事は。」
「早く、安呪寺に行って帰ろうよ。」
「わかりました。じゃあ、準備しますから、先生も必要な物だけ持ってください。
ここから歩いて20分くらいで行けるみたいですから、暗くなる前に戻らないと。」
荒れ寺で暗くなるとか…勘弁してくれよ。
「永瀬君!早く行って、早く帰ってこよう!いいね!」
「わかりました。急ぎましょう。…ぷっ。」
「永瀬君!何、笑ってんだ!」
民宿のご主人に出掛けて来ると伝え、安呪寺に向かった。
ガードレールの向こうは、草で覆われ下が見えない。暫く歩いているとカーブミラーに人が映っているのが見えた。
「永瀬君、ほら、向こうに人がいる。」
永瀬君がカーブミラーを見て、本当だ、カーブミラーって便利ですね。なんて、当たり前の事を言っている。
カーブを曲がって直線になった所で立ち止まった。
「せ、先生…。」
「な、な、永瀬君…。」
「なんで、いないんですか…?」
カーブミラーに映っていた人が、映っていたはずが…いない…。やめてくれよ…。
「な、永瀬君!」
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