第1章

8/19
前へ
/19ページ
次へ
目的地に着いたのは14時を少し過ぎた頃だった。 「先生、疲れましたね。今日はこの民宿に泊まりますよ。」 バスを降りたら民宿の人が迎えに来てくれていた。流石、永瀬君。段取りが良くて助かるよ。予約の時点で時間を決めて迎えを頼んでたらしい。 帰りは遅くとも14時5分のバスに乗らないと帰れなくなる。凄い場所だ。この辺の人達は車は必需品だ。 緑に囲まれ、うん、確かに空気はうまい。だが、何もない…。小さな村だが道路は舗装されている。店は萬屋が一件あるという。 「先生、何もないと思ったでしょ、実は人気のパワースポットがあるんですよ。」 「へぇ…。」 「何ですか、その興味なさげな返事は。」 「早く、安呪寺に行って帰ろうよ。」 「わかりました。じゃあ、準備しますから、先生も必要な物だけ持ってください。 ここから歩いて20分くらいで行けるみたいですから、暗くなる前に戻らないと。」 荒れ寺で暗くなるとか…勘弁してくれよ。 「永瀬君!早く行って、早く帰ってこよう!いいね!」 「わかりました。急ぎましょう。…ぷっ。」 「永瀬君!何、笑ってんだ!」 民宿のご主人に出掛けて来ると伝え、安呪寺に向かった。 ガードレールの向こうは、草で覆われ下が見えない。暫く歩いているとカーブミラーに人が映っているのが見えた。 「永瀬君、ほら、向こうに人がいる。」 永瀬君がカーブミラーを見て、本当だ、カーブミラーって便利ですね。なんて、当たり前の事を言っている。 カーブを曲がって直線になった所で立ち止まった。 「せ、先生…。」 「な、な、永瀬君…。」 「なんで、いないんですか…?」 カーブミラーに映っていた人が、映っていたはずが…いない…。やめてくれよ…。 「な、永瀬君!」
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加