序章

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お昼前の開店準備中のもみじ軒 江島は電話を切ると座敷の中華テーブルに戻った。 「サトさん、どしたん?」 江島に声をかけたのは広島カルプの一軍総合コーチの緒川孝。 「あっ、オガさんすいません。ちょっとした厄介な相談の電話で、それにしても、オガさん、サシで飲みたいってどうしたんです?」 「そうなんよ、サトさん、実は野島監督から内々に連絡があってから」 「はい」 「来シーズンのカルプの指揮を頼まれたんよ」 「えっ、ノジケンさん辞めるんですか!?」 「サトさん、声がでかい」 「すみません」 「店、貸切っとるけえゆうて、情報漏洩になるけえ気~つけてくださいよ」 「すいません。それにしても、どうしてですか?」 「不眠症が悪化して満身創痍らしいんよ、体力の限界じゃ、よ~った」 「あー、確かにノジケンさん夏場の時、体調くずしてましたしね」 「ほんで後任なんじゃけど、ワシが指名されたんよ」 「成程、確かに、今のカルプを任せるならオガさんですね」 (ゴクリ) 「じゃけど、ワシは野島監督に別の人間を推薦したんよ」 「おっ、誰です?」 「サトさん(笑)」
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