連理

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さわさわと木立が風に鳴った。 冷たい北風が木の葉を落とす秋の終わり。 いつものように箒(ほうき)を手に境内を掃きながら空を見上げると、風が強いのか、真っ青な空には細く流れた雲が所々に浮かんでいるのが目に見えた。 ビルも何も見えない、田舎の風景だ。 山間にあるこの町はどこを見ても古い家に田んぼと畑、そして山の木ばかりが広がっている。 数少ない若者は華やかさを求め、成長するとすぐに都会の街へと出ていく。残るは頭の固い年寄りばかり。 家だの血だの、そんな古いしきたりが細々と残るここでは僕の未来に選択肢などなかった。 町唯一の古い寺。 僕は、他の友達のようにこの町を出ることは許されていない。産まれる前からここを継ぐことが決まっているからだ。 厳粛な父とそれに逆らえない母。 そして口うるさい祖母。 ここは、小学生だった僕にとって、まるで監獄のようだった。 だが逃げる術などまだ幼かった僕にはある筈もなく。 毎日をただ淡々と過ごす。 そんな日々だった。 「……はぁ」
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